『世界最高のジャズ』の著者でもある原田和典さんによるJAZZへの熱い想いを語ったコラム! |
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第38回 ビ・バップに取り組み、砕け散った男。ハービー・フィールズの話をさせてもらうぜ |
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![]() DISC GUIDE SERIES JAZZ SAX おかげさまで、ようやく「THE DIG PRESENTS DISC GUIDE SERIES JAZZ SAX」(シンコーミュージック)をお届けすることができた。人気ロック雑誌「THE DIG」別冊の“ディスク・ガイド・シリーズ”第33弾目である。 ![]() Live At The Flame Club,St.Paul とはいえハービー・フィールズの誕生日は1919年5月24日だというからディジー・ガレスピー(17年生まれ)、セロニアス・モンク(17年生まれ)、ハンク・ジョーンズ(18年生まれ)より年下、チャーリー・パーカー(20年生まれ)、ワーデル・グレイ(21年生まれ)とも同世代なので、やりようによってはもうちょっと巧みにビ・バップに同化できたはずであり、しかもニュージャージー州の生まれなのだから、ニューヨークの最先端ジャズなど気持ちしだいですぐにマスターできたはずではないかと思うのは僕だけか。彼は17歳からプロ活動をはじめ、ジュリアード音楽院でも学んだ(つまりマイルスとはジュリアードの先輩・後輩という関係にあたる)。 ![]() ミントン・ハウスの〜 ![]() FIRST MILES ハンプトン楽団から独立した後は自分のビッグ・バンドを結成し、当時の最大手レコード会社であるRCAビクターにも録音している。フィールズ楽団の卒業生にはニール・ヘフティ(トランペット、のち「バットマン」の音楽で有名に)、マニー・アルバム(サックス)、エディ・バート(トロンボーン)、サージ・チャロフ(バリトン・サックス)、ベニー・ハリス(トランペット)といったビ・バップ系のメンバーがいる。しかしこのビッグ・バンドも48年に解散してしまう。第2次大戦終了まもない当時はビッグ・バンド苦闘の時代。カウント・ベイシーはバンドを8人編成に縮小し、デューク・エリントンも大富豪の息子チャーリー・バーネットから資金提供を得てようやくオーケストラを維持していたといわれている。先述したIAJRC盤は、小編成バンドで再スタートをきった当時のフィールズを捉えた吹込みだ。 しかしこの“ハービー・フィールズ・セプテット”も経済的な成功とは程遠かったようだ。しかし、ビ・バップさえやらなければ、やはりフィールズは優れた楽器の使い手なのである。テナー、アルト、バリトンの各サックスを吹きこなし、クラリネットにも魅力を発揮する彼はやはり得がたいスインガーではあった。50年代に入るとホンカー〜ムード・ミュージック路線で順調にレコーディングを重ね(このころ、無名時代のビル・エヴァンスも彼のバンドに所属していたはずだ)、53年に録音された「ハーレム・ノクターン」は生涯を代表するヒットとなった。後年、サム・テイラーが吹き込んだ同曲が流行ったのは、すでにフィールズがこのメロディを民衆に“場慣らし”していたからだ、とは言いすぎか。12インチLPもRKO、デッカ、ユニーク、フラタニティといったレーベルに残している。56年ごろにはフロリダ州マイアミに移住し、同地を拠点にしながら(レストランも経営)、ラスベガス公演も成功させた。 が、1958年の9月17日、悲劇は唐突に訪れる。この39歳の有能なサックス奏者は、ベッドに突っ伏したまま息を引き取った。睡眠薬の飲みすぎが原因だった、といわれている(年齢と死因は白木秀雄そっくりだ)。死体は彼の息子と、ギタリストのルディ・カファーロによって発見された。ルディの、ちょっとチャック・ウェインを思わせるバップ・ギターは『Live At The Flame Club,St.Paul』で、たっぷり聴くことができる。 |
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『THE DIG PRESENTS DISC GUIDE SERIES JAZZ SAX』(シンコーミュージック)が遂に発売されました。ディスクユニオンをはじめとするレコード店や書店でドクロの帯のかかった本を見つけたら、ぜひレジに運んでいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
猫が登場するレコードやCDのジャケット(いわゆる“猫ジャケ”)約200作をオールカラーで紹介した『猫ジャケ 素晴らしき"ネコード"の世界: レコードコレクターズ増刊』(ミュージックマガジン)も好評です。作品解説はすべて僕が担当しております。今年の秋は猫とドクロで!
原田和典(はらだ かずのり) 1970年北海道生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年夏よりソロ活動開始。ジャズ、ブルース、ファンク、ロック、アイドル、突然段ボール、肉球、なんでも好き。 |