『世界最高のジャズ』の著者でもある原田和典さんによるJAZZへの熱い想いを語ったコラム! |
|
![]() |
|
第3回 ジョーイ・バロンのタンス叩きにすっかりドギモを抜かれちまったぜ |
|
またニューヨークの話題である。 ◇ ◇ ◇ ニューヨークにつくと僕はまずレコード店に行き情報を入手する。おや、明日は昼からFMの公開放送があるじゃないか。場所は57丁目のトルノー(現地の人はトーノーという)時計店か。へぇー、あのマドンナやエリック・クラプトンの部屋もあるという成金トランプ・タワーのそばでやるのか。翌日、早起きした僕は開演かなり前に到着、ジェリ・アレン・トリオをリハーサルから見た。メンバーはアレンのピアノに、ルーベン・ロジャースのベース、マーク・ジョンソンのドラムス。ちなみにドラマーのスペルはMark Johnsonという。有名なベーシストMarc Johnsonとは関係ない。ドラムのマークはジャッキー・マクリーンのバンドで来日したことがある中堅だ。そこにサプライズ・ゲストとしてアレンの夫であるウォレス・ルーニー(アレンは彼の苗字をロニーと発音)が加わった。アレンとウォレス、ふたりはもう見つめっぱなし。アレンは最近もウォレスのバンドやチャールズ・ロイドのカルテットで来日していたが、自分がリーダーになって日本で演奏したことはまだ一度もないように思う。十数年前のチャーリー・ヘイデン、ポール・モウティアンとの来日公演も中止になってしまったし。それだけに最新作『ライフ・オブ・ア・ソング』からの曲を中心に、彼女のオリジナル・ナンバーをたっぷり聴けたのはうれしかった。最近のアレンにはマイナー・ミュージック、JMT、DIWに吹き込んでいた頃の尖り、叛骨は余り感じられない。スティーヴ・コールマンの傘下で、M-BASEの女帝の座をカサンドラ・ウィルソンと二分していた頃が懐かしい。そこが残念といえば残念だが、ラブラブの夫、かわいい盛りの娘&息子に囲まれて6月の暖かな日差しを浴びていればそれも仕方がないか。ウォレスは曲によって2本のトランペットを持ち替えた。トランペットとフリューゲルホーンの持ち替えはよくある話だが、ペット2本のそれは珍しい。いつだったかやっぱりニューヨークでルー・ソロフが2本のトランペットを使い分けていたのを見て以来だ。 ![]() ウキちゃん ![]() ウキちゃん ウキちゃん・・・初めてこの名前を知る人も多いだろう。正確にはコットントップ・タマリンという。コロンビア出身。顔が小さく黒く、その上に獅子舞のような白い毛が生えている。動きはむちゃくちゃ速く、僕がまばたきをしている間に100メートルぐらい移動することもある。おそらくマッハの領域ではないか。ゴンサロ・ルバルカバのピアノもイングヴェイ・マルムスティーンのギターもレイザーラモンHGの腰の動きもウキちゃんの前ではタジタジだろう。僕は初めてこの動物園に行ったときからウキちゃんに魅了され、会うことを一方的に楽しみにしている。このくらいの速度で生きてみたい、と切実にあこがれているのである。そして今回、半年ぶりの生ウキちゃん。ちょうどエサを食べている時間だった。 ![]() ウキちゃん ![]() バーント・シュガー さてそのセントラル・パークでも無料コンサートが開かれた。バーント・シュガーというグループと、ウィル・キャルフーン(カルホーンではない)〜ファラオ・サンダース〜グレアム・ヘインズのスペシャル・バンドだ。じつは同じ日、ブルックリンのプロスペクト・パークではザ・バッド・プラス、チャーリー・ハンター・カルテット、ジェームズ・カーター・オルガン・トリオの無料ライヴがあった。僕は迷いに迷ってセントラル・パークを選んだが、プロスペクト・パーク公演にも後ろ髪をひかれ続けた。まったくもう、同じ日の同じ時刻にどうしてライヴをぶつけるのだろう。日にちを考慮してくれればいいものを。だって絶対にファンはダブっているでしょう。特にファラオとジェームズあたりは。僕のような思いをしてどちらか1つに泣く泣く絞った音楽好きはすごく多いのではないかと思う。 ![]() ウィル・キャルフーンー 僕はグレアムのラッパが大好きで、アルバムも15年ほど前のミューズ盤からチェックしているが、彼のような逸材が正当に評価されないシーンなんてニセモノだ。 ![]() ヴィジェイ・アイヤー ヴィジェイ・アイヤーもそうだ。すごいぞ、コールマン。マキシマム・リスペクトを一方的に捧げたい。ファラオ・サンダースも、日本での不調がうそのように(僕はここ12年の間に何回か彼の来日公演を見たが、満足できたことは一度もない)元気にして快調。ウェイン・ショーター作「ネフェルティティ」でのブロウは、沁みた。ファラオ、まだまだやってくれそうだ。 ![]() ロビン・シュルコウスキー ![]() デニス・ゴンザレス |
|
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
|
大阪に行ってきた。カレーそばのうまさに、ほっぺたが落ちる。落ちたほっぺたが暴れまわったので、それを拾って顔にとりつけるのが大変だった。ざるうどんのうまさに、鳥肌が立ち、いつしか頭の上にトサカができて卵を産み落としてしまった。というのはウソだが、とにかく食べ物がうまい! 思いっきり音を出して、すすってきた。ズルズルズルと、ベン・ウェブスターのテナー・サックスのような音を出して、うどんをたらふく味わった。
原田和典(はらだ かずのり) 1970年北海道生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年夏よりソロ活動開始。ジャズ、ブルース、ファンク、ロック、アイドル、突然段ボール、肉球、なんでも好き。 |